地球温暖化防止のためにCO2削減が叫ばれるようになって久しい。
自動車もエコカー、ハイブリッド車、EVなど低排気ガスの車が増えて来ている。
ガソリンを燃やして駆動するエンジンいわゆる内燃機関を使用する頻度を減らす事で環境にもお財布にも優しいハイブリッドカーだが、冬場の暖房を使用する際にはエンジンの熱を利用するためあえてエンジンを回して温度を上げようとするから、燃費が極端に落ちてしまう。
そこで、筆者が毎年秋から冬にかけて行なっているハイブリッドカーのエンジンを保温する、グリル塞ぎという技?をご紹介したいと筆を取った次第です。
目次
冬のハイブリッドカーの燃費事情
冬場のハイブリッドカーはなぜ燃費が落ちるのか
エンジン始動後暖機が終わるまで、すぐに全開走行してはいけない。
車を運転しているあなたなら一度ならず聞いた事はあるだろう。
エンジンには適正な作業温度というものがあるのだ。
エンジンは金属で出来ているのでガソリンの燃焼による温度上昇で熱膨張が起こる。十分に暖められ膨張が完了した状態で最大のパフォーマンスを発揮する様に設計されているわけだ。
冷えた状態では各パーツの連携に僅かな障害が生じたり、潤滑油のも冷えた状態で機能が低下したりするなどエンジンの寿命を縮めてしまう。
だから、エンジンの温度が適度に上がるような仕組みになっている。
走行中の風がエンジンを冷やす
そんなエンジンでもガソリンの燃焼により際限なく加熱されてしまうと、潤滑油の焼き付きが起こりこれもエンジンを痛めてしまう事になる。
だから常に血管のようにエンジンの鋳型の中に彫られた水の通り道に冷却水を流して温度を下げている。
高温になった冷却水は、時にラジエーターという外部装置に通され、外気の吹き込みによって冷まされながら循環していく。
停車中などで外気が流れ込まない場合は冷却ファンが作動し風を送る。
充分に冷えた冷却水はまたラジエーターから遮断されてエンジン内に留まり適正温度まで暖められる。
そのようにしてエンジンの温度は常に一定に保たれている訳だ。
エンジンが回って暖めようとする。
ハイブリッド車の場合、モーターのみで走る場面が出て来る。エンジンは駆動用バッテリーの充電を必要とする場面や、走行中パワーが欲しい場合に回るのが主だ。そうして低燃費を実現している。
エンジンが回る頻度が少ないとその分、暖機されるのに時間が掛かる。
エンジンの冷える冬場はバッテリー充電が必要ない場合でも、エンジンが回り頻繁に暖機をするようになる。
冬場などパワーオンからエンジンが掛かり40℃くらいになるまでエンジンが回り続ける。
暫く走行して水温が上がりエンジンが止まる。
だが、走行中の冷たい風に当たって見るみる水温が下がりまたエンジンが回るの繰り返し。
暖房を使おうものならエンジンの止まる暇はほとんど無い
ほとんどの自動車は冷却水の熱を車内に放出して暖房にしている
暖房をつけて冷却水の熱を室内に送り込むと、エネルギーの交換でエンジン冷却水の水温は下がる。
今度は水温が下がりすぎないように走ってもいないのにエンジンが回り出してしまう。
従って冬場のハイブリッドカーは燃費が落ちる事が、ハイブリッドカードライバーの悩みの種。
燃費を抑えるためにシートヒーターを装備したり、着る物を暖かくしたり涙の滲む努力をして来た人も多いだろう。
せめて車の中では薄着で快適に、暖かく暖房を利用してリラックスしたいもの。
走行風によって冷やされ過ぎてオーバークールを防ぐためや、暖房で熱を奪われる為に余分にエンジンを回そうとする動きを抑える為に保温するのがグリル塞ぎの役目なのである。
フロントマスクに付いているグリルの役割
エンジンを冷やさない工夫
車のフロントマスクに付いている格子状の隙間。
これをグリルと呼ぶのだが、どの車にも同じようにフロントにグリルが付いている。
のっぺらとしてつるつるのフロントマスクにはお目にかかれないのはなぜか。
それは、その隙間からエンジンルーム内に外気を送り込み燃焼に必要な空気を効率よく取り入れたり、主にエンジンを冷やしたりする為である。
グリルが無ければオーバーヒート
グリルが無くエンジンルームを外気から遮断してしまうと熱くなり過ぎたエンジンを効率よく冷やす事ができず、常にファンを回すなどしなければならなくなってしまう。
冬場は冷えすぎオーバークール
そんな便利な風通しを良くするグリルも、冬場は風通しが良すぎて困りものだ。
常にエンジンが回り続けるガソリン車ならエンジンが高温を保ち続けるので問題は無いが、エンジンが回らない事が多いハイブリッド車の場合はすぐにエンジンが冷えてしまう。
冷えすぎないように回らなくても良い時にエンジンが回り温度を上げようとするのだ。
グリル塞ぎで冷えすぎ防止
そこで、考え出されたのがグリルを塞いでしまおうという技だ。
ただでさえ冬の気温は止まったエンジンの熱を奪っていく上に、走行風にさらされれば水温は見る見る下がっていく。
そうはさせじとうなりを上げエンジンが動き始めるのは、お金をまき散らしているのに等しい。
エンジンルームに外気が吹き込むことを防ぎ、熱が外に逃げる事も避けた方が良い。
エンジンルームは家の中と同じだ。
冬はなるべく冷たい空気を取り込まないように窓を閉めてあげよう。
用意するもの
- 100均で購入したフロアマット
- 落下防止にビニールロープ
- 耐候性の結束バンド
- ハサミ、ドライバーなどの工具
グリルを塞ぐものは柔らかい素材で且つ、風を通さないものが良いだろう。
プラ板などの硬いものだとエンジンルーム内に挿入する作業がやりにくい。
100均などでフロアマットが安価で手に入るのでお勧めだ。
グリルの形状に合わせたフロアマットを内側からロープでおろし、グリルに縛り付ける。
マットの固定は作業の簡単な結束バンドが良い。
一冬持てば良いので普通のものでも良さそうだが、丈夫な耐候性の物にしておくと安心だ。
色も黒で目立たないものを使用。
外側から結束バンドを通せるように、別の結束バンドでリングを作っておく。
グリル内部の形状によっては一枚もので作れる事もあるが、この車種は上下エリアが分かれている。
下のエリアがさらに外気温度計のパーツを避ける為に2つに分ける必要があった。
あまり完全に塞いでしまうと最低限の冷却に支障が出ると予想されるので、全体の1割程度は隙間が空く様に作成する。
作業はシンプル
まずは下の部分の部材を投入。
グリルの丁度いい場所まで下りてきたら、外側から結束バンドをマットに作っておいたリングに通す。
ドライバーの先でリングを手前に引っ張る。
柔らかいマットが不安定で縛り付けるのに多少時間を要するが、悪戦苦闘するのも車いじりの楽しみだ。
万が一脱落してエンジンルームの床の奥深くに消え去ってしまったら、取り出すのが容易ではない。
そこはビニール製のロープを取り付けてエンジンルームの上部に結んでおくしておくと良いだろう。
上の部分は1枚もので内側から手も届くので作業しやすい。
構造上、マットが下に落ちることは無く固定しやすいので安定して作業できる。
完成した姿は外から見ても違和感無し。
明るい色や、光沢のある材料は目立つ恐れがあるので注意。
水温計を取り付けて温度をチェック
オーバーヒートしないように監視しよう
OBD2規格の車体情報が取れるガジェットを取り付けて常に水温を見れるようにしておこう。
筆者の場合、フロントガラスに移す出すヘッドアップディスプレイに水温計を表示している。
冷却水の適正温度は80℃前後と言われていて、その温度を保つように設計されている。
冷却水が100℃を超えたら要注意
冷却水は普通の水とは違い、エチレングリコールという成分が含まれており水よりも沸点が高く、さびにくい性質を持っている。高温になるエンジンを冷やすのには沸点100℃では役に立たないのである。
冷却水の危険水温は105℃前後だ。
夏場など停車中、エアコン全開などでエンジンが回りっぱなし状態では注意が必要だが、滅多にそこまで上がることは無い。
渋滞中など外気の風がラジエーターに当たらず、充電の為にエンジンが回っていたりすると水温が上がる。
概ね95℃以上で電動ファンが回り冷却の為の送風を始める。
実際の水温を見てみる
11月の朝、水温は10度前後
表示されている数字が水温。
パワーオンからゆっくりとモーターで滑り出す。
下の目盛りはエンジン回転数の目盛りだが、少し車を動かすと暖機をしようとエンジンが回り出し、水温が上がり始める。
40℃前後までグングンと水温が上がりエンジンが停止する。
そこまで駆動バッテリー用の発電と併せて暖機のために必要のないガソリンを使ってしまう訳だ。
距離を走りながら走行中のエンジン回転により発熱し上がった水温を利用する為、暖房を使用すると熱を奪うので水温は下がる。
水温が下がっても走行中エンジンが駆動すればまた温められる。
ハイブリッド車の場合、停車中でもエンジンを掛けて温度をあげようとするから厄介だ。
その様な状態を繰り返しながら水温は適正温度に保たれる。
しばらく走っていると80℃前後で安定するのが分かる。
頻繁に90℃を超えないようなら安心して良い。
グリル塞ぎにおいて水温の上がり過ぎに注意して、80℃から90℃の間で暖房を適度に使いながら安定したエンジンの活動が出来れば成功だ。
やり過ぎに注意だが、実際はそこまで完璧に隙間を塞ぐことの方が困難だろう。
筆者は念のため少し隙間を空けて仕上げている。
まだ隙が多くて温度が上がらない方がまだましだ。
その時はエンジンが勝手に回って熱を発してくれる。
まとめ
いかがだったでしょうか。
冬場の冷たい空気がエンジンルームに入り込むのを防いで、保温効果を高める通称グリル塞ぎ。
余った熱を暖房として使えるので、燃費を気にせず快適なドライブを楽しめる事でしょう。
最近はエンジン温度に合わせて自動でグリルを塞いでくれるグリルシャッター付きの車も現れているほど、その効果に注目が集まっています。
自動車メーカーも採用するほど効果が見込まれているグリル塞ぎをこの冬試してみるのもいいかもしれませんね。