子どもが不登校になった時、解決策をもとめカウンセリングなどで相談すると、「今は学校よりもゆっくり休ませましょう」と言われることが多いでしょう。ところが休ませているだけでは状況が変わらず、悩み続けるケースも多い。親も疲弊し、子どもは自分の世界に閉じこもるようになり、長期化するもの。
解決策は子どもを良く理解し、不登校に対する親の心構えを変える事です。難しいようで、実はシンプルだったりするのです。
不登校にまつわる考え方
私は不登校の相談を受け付けて、これまで10年に渡り1,200人を超える様々な状況を見聞きしてきた。そして400人以上の小・中・高校の卒業生を見送ってきた。
その経験から、不登校・引きこもりの本人や保護者の悩みの軽減、自立の支援方法についてもこの記事で綴っていきたいと思う。
不登校という選択肢が認められてきている?
私のもとを訪ねて来る不登校生たち
不登校の原因は様々だが、相談を受けていて感じる事は、環境に原因がある事がほとんどだ。本人の特性に環境が合わない事が多い。
私のもとに相談に来る不登校の子どもは、環境に合わせられずに心が疲弊して充電切れを起こしている 場合が多い。学校側も多様性を認め無理せず休ませてしつこく登校を促すよう刺激しない所が増えている。
不登校になる子どもは環境に馴染めない自分を責めて、自信を失い、気力を失い、学校に行こうとすると体が拒否反応を起こして腹痛や頭痛を引き起こす。この記事を見ているあなたには心当たりがあるかもしれない。
医者に行き薬で対処する事は大事だ。原因が心因性の場合、医者はただ休ませてくださいとしか言えないのが医療の限界だ。原因から遠ざけるのが一番の治療法なのだ。
「何とか学校に行ってもらいたいんです。」と皆さん相談してくる。
勉強の遅れや内申点を気にしていた親も、日に日に元気をなくし心の充電切れを起こしている子どもを案じ、その内「以前の様に元気に明るくなって欲しいです。」と言うようになる。
現状を聞いてみると、お医者さんにカウンセリングを受けて学校を休ませるように言われ「そんなに辛かったら学校もう行かなくていいよ」と言って不登校状態になっている。それ以降打つ手が無いのだ。
本人を変えようとしない
不登校改善はそう簡単ではない。学校を休めば休むほど、親は学力の低下を心配し、子どもは活力を失っていく。やはり、学校に通わせる事が最終目標なのだ。
私がどのようにしてきたか。
まず、本人を変えようとしない事。
環境が合っていない事は皆分かっている。
分かっているが、なぜか学校はそこしかないという観念しかない。学校制度がそうなっているから仕方のない事だが、どうにか登校時間を工夫したり、おだてたりなだめたり、将来を理論で煽ったりして本人を環境に適応させようとしている。
私が対処してきた数々の事例から述べると、それは徒労に終わる。
環境の方を変える
最適な方法は環境の方を変えてしまう事だ。つまり学校を変えてしまう事が一番だ。
教育委員会に相談するなどして隣の学校に転校してしまう事はいじめの証明など、証拠集めのハードルが高い。しかも同じ仕組みの公立学校に転校したところで似たような環境に違いはない。
環境の全く異なった代替の場所に一時的に通学させて、それを学校の出席とする事は認められているのでそこを有効活用する事をお勧めしている。
ただ闇雲に学校に行かせる為の支援を繰り返すだけでなく、一人ひとりが今できることを総合的に考え、最終的に自立するため現状での最善の方法を選ぶことが大切だ。
学校以外の学習の場を持ったって良い事は文部科学省も認めている。
だが、親として子どもを普通に学校に行かせたいという思いも解る。
やっぱり不登校は直したい
もちろん、一人ひとり生き方に個性や多様性が認められてしかるべきだ。
だからと言って不登校でも自信を持ちたまえなどと、きれい事を言うつもりは無い。
実際にほぼ100パーセント近い保護者が自分の子どもの不登校を直したいと思う現実を間近に見てきているのだ。
だから、今回は不登校を改善する具体的な方法について解説しようと思う。
不登校への処方箋
1.心構え、姿勢(観念)をかえる
万人に当てはまる処方箋など無い
この記事を読んでいるあなたも不登校の子どもを抱えているだろう。
どの、悩みでも同じだが、100人いれば100通りの事情があり、これが絶対という処方箋などない。
だが、それではせっかくこの記事にたどり着いたあなたをただ失望させてしまうだけとなってしまう
ここでは、これまで私が見てきた不登校改善への足掛かり、あなたのケースにも当てはまるような普遍的な対処法についてお伝えしたいと思う。
心構え、姿勢がすべて
不登校改善には心構え、姿勢が対策の中心になる。
子どもの幸せを願って頑張っていたとしても、思い通りに行かずに行き詰ってしまう事もある。
もしかすると、それは子どもの世界への認識、親として子どもに向き合う心構えや姿勢に問題があったのかもしれない
支援の前に子どもを理解する
わが子も他人の子も、一人ひとり異なる特性を持っていることを理解しよう。
そして状況をよく見て、子どもがどんな事に困っているのか、把握しよう。
そこではじめて、支援すべき事がわかる。
子どもに合わない方法で型どおりの支援をしても、かえってその子を苦しめるだけといった場合が多いのだ。
間違った支援が心を遠ざける
親や教員から誤ったサポートを受けた子の中には「自分の事をわかってくれないなら、近寄らないでほしい」という悲痛な思いを打ち明ける子もいる。
もっとみんなと一緒に遊んだ方がいいよ、だとかもっと自分から声を掛けた方がいいよ、など
その子の将来を思って良かれと思って声掛けをしたとしても、一人が好きな子どもだっている。
そういった子も成長するにしたがって、考え方が大人になり、社会に必要なコミュニケーションは取れるものだ。
また、友達と触れ合うのが好きだが、刺激に弱く、遊んだ後一人でゆっくり充電する時間が必要な子だっているのだ。
それを大人の価値観で無理にコミュニケーションを身に付けさせようとすると、他人とのコミュニケーション自体がネガティブなイメージと結びついてしまう。
子どもにとって理解を伴わない支援はそれほど辛いものなのである。
自分の価値観を見直す
特にあなたが学校関係者の場合は注意が必要だ。
不登校の子どもから言われたことがある
学校の先生は学校が好きだから先生になったんだよね。楽しいからって学校を勧めて来るけど、学校が嫌いな僕らの気持ちは分からないと思う。とか
いつもポジティブな声掛けをしてくれる先生には、私たちのようなおとなしい子の気持ちは分からない。という具合だ。
まずは、支援する側の姿勢を改めよう。
学校は楽しい。友達は楽しい。という正義、固定観念はあなただけのものだ。
支援する能力は共感力だ
自分の価値観は一旦横において、共感する事を考えるのだ。
転んだら、「応援するよ。頑張って立ち上がろう」の前に、「そうか、痛かったろうね。辛かったね。」という事だ。
その子が今どんな気持ちなのか?
本当は何を望んでいるのかを推し量ることだ。
本人の考える幸せとは何か
何が得意で、どういう事に幸せを感じるのか。
子どもの特性がわかってくると、その子の得意・不得意が見えてくる。
そうやって不登校改善は理解を深めることから始まるのだ。
周りの大人が子どもの事をきちんと理解して応援すれば、その思いは必ず子どもに伝わる。
「自分をわかってくれる人がいる。」という思いが、子どもの自信や安心感につながっていく。
2.具体的アクションを起こす
子どもを良く観察しよう
応援のしかたに迷ったり、失敗して戸惑ったりしたときは、原点に立ち返って自分のやり方を見直そう。
- 原点は、子どもの短所を直すことより、長所を伸ばす事。
- 子どもを大人の考えに適応させるのではなく、大人が子どもの気持ちに寄り添う事。
- 子どもの様子をよく見る事、まわりと相談する事が大切である。
相談できる仲間を見つけよう
子どもが不登校になると、たいていの親は将来を考えて不安になってしまう。
その不安が子どもに伝われば、子ども自身もますます不安定になる。
こうした悪循環は、似たような経験を持つ親や先生、カウンセラー、医師など、子どもの問題を一緒に考えていけると思える人を見つけることで、多くの場合断ち切る事ができる。
学校以外の事でポジティブにさせる
学校以外の事でいい。大人の理解で子どもの心のエネルギーが次第に回復してきたら、外に出る活動を応援しよう。
心のエネルギーについては次回の記事で詳しく述べるが、まずは体を動かす事だ。
好きなイベントやレクリエーション、ショッピングなど休日なら気兼ねなく出かけられるだろう。
そうやって体が活動し始めると心も活動し始める。運動によって精神の安定や幸せを感じるセロトニンや痛みの緩和、気分が良くなるといったエンドルフィンなどの脳内ホルモンが分泌されポジティブになる事が分かっている。このような行動心理学をうまく活用しよう。
- 身近な人が自分を理解してくれると心のエネルギーが充電される。
- やりたいことを行動に移す。
- 体が動くと心もアクティブになる。
- 学校に行く勇気が湧いてくる。
この流れをつかむことが一つの目標となるだろう。
3.焦らず、あきらめず覚悟を決める
深刻になる前に今、手を打つ
不登校問題については、文科省が「誰でも不登校になりうる」と認めた事や、通信制高校など、進学の選択肢が増えた事、世の中が多様な生き方を認め始めたことで以前ほど深刻にとらえられなくなった。
一方で、子どもの抱える問題を先送りしたり、放置したりする傾向も増えてきており、問題が長期化してしまう一因にもなってきている。
やはり、成人になり引きこもり、ニートになると抜け出すのが難しくなってくる。
今安全ならば危険を冒さないよう無意識に同じ行動を継続したくなるという人間の「現状維持バイアス」が働くからだ。
不登校はあきらめずに手を打って改善しなければならない。
無論、無理やり部屋から引きずり出すなど、強引な手法は逆効果だ。
親の覚悟は必ず伝わる
大切なことは、親が覚悟を持ってサポートするということである。
子どもの小さな意欲を大切にして、親がいろいろと骨を折る。
ここが頑張り所だ。
難病の子どもを抱えた親が名医を探し回るように、少しでも不登校を改善できそうな施設があれば情報を集めたり見学をしたりする。
子どもはそんな親を必ず見ている。
照れくさくて言わないだけで、感謝しているか、今は鬱陶しいと思っていても必ず感謝する日が来るものである。
不登校から復帰した生徒の何百という卒業文集を読んできて、それは実証されている。
皆、最後には声に出せない心の声を綴るのだ「おかあさん、おとうさん、ありがとう」と
子どもに期待するのと信じるのは違う
こうなってくれるだろうと期待はしない事。
腹が立つのは相手の行動に期待しているからだ。
思い通りにいかないと、何で私の期待した通りにしてくれないの?となる。
親の期待は何よりも重い。無意識にプレッシャーを掛ける事になる。
それよりも可能性を信じてあげる事だ。
良くなる可能性があるから信じて待とう、というスタンスでいることだ。
不登校とは何か
不登校の定義
文部科学省は、不登校の児童生徒を
『何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しない、
あるいはしたくともできない状況にあるため年間30日以上欠席した者のうち、
病気や経済的な理由による者を除いたもの』
と定義している。
一定数存在する不登校
この定義に基づいて文部科学省が行う不登校調査によると、
不登校の児童生徒の数は、毎年右肩上がりに増加していたが、一時期減少に転じた時期もあったがおよそ12万人から17万人となっている。
小中学生の2~3パーセントが不登校となっており、看過できない問題として認識されている。
潜在的にはもっと増えている
不登校とは「ただ単に学校へ通学していない状態を指す言葉である」と考えがちであるが、文部科学省が定義する不登校とは、それとはやや違っている。
病気のために学校を欠席している場合や経済的理由によって学校を欠席している場合には、不登校と考えていない。
また、年間30日未満の欠席については、
「教育上、看過できないほどの欠席日数」と考えないため、これらの者は除外されている。
ただ、文部科学省発表の不登校の定義およびデータだけをそのまま鵜呑みにして、不登校を議論するのは好ましいことではない。
それは、保健室登校、特別教室および一部のフリースクールへの通学を、小学校および中学校が出席扱いとする場合があるため、
上記の数字には、保健室登校などを行っている児童生徒は除外されている可能性があるからだ。
実際に教室に入って授業を受けられない児童生徒の数は、上記発表の数字よりも、
より大きなものである可能性があることに注意しなければならない。
だからあなたも例外的な存在ではない、いつ不登校があなたの家の扉を叩いてもおかしくない。可能性は誰にでもいつでもあるのだ。
まとめ
これまでの話をまとめると、不登校の原因はほぼ環境にある事を認識してアクションを起こそうという事だ。
その為の対処法は3つ。
- 観念を変える(親の価値観より子どもの価値観に寄り添う)
- 具体的アクションを起こす(学校以外の選択肢も)
- 焦らず、諦めず覚悟を決める(期待ではなく信じる)
最後はあなたしかいない
「問題が生じたときは自分が何とかする。」と腹を決める事だ。
そうした親の姿勢が子どもの信頼につながるのである。
どんなに子どもが、反抗しふてくされ、親を舐めきったような口をきいたとしても、それは未熟な心が表現の仕方の分からないSOSの叫びなのだ。
親のあなたがしっかり受け止めなくてどうするのだ。
時には感情的になってしかりつけることもあるだろう。人間だもの。
それでも、態度で、姿勢で、背中で語ってやるのだ。
子どもを信じていると。
心から。
辛いときは思い出そう。あなたは決して一人ではないことを。
上述した全国17万人もの不登校を持つ保護者が、同志が同じ悩みに立ち向かっているのだ。
もちろん、私も応援している。
具体的には次回の記事で解説するが
「決してあきらめない」という決意で、寄り添ったり、見守ったりしながら、子どもを理解するように努めていれば、サポートすべき事が見えてくる。
根気強く続けていこうではないか。