心の便利帳

初対面でも大丈夫。相手の警戒を解き話を聞き出す会話術4つのポイント

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私たちは日常の中で、有効な関係性を築くため、あるいは仕事上必要に駆られて相手に敬意を払いながら関心を示し、顔色を伺いながら質問をしようとしても、あまり親しくない、初対面や初めから距離のある関係性の場合などはどうも暖簾に腕押し、手応えのない反応になりがち。

以前の記事で雑談の対応について書いたが、あれはオウム返しや5W1Hなどのテクニックを使って、主に相手に話しかけられた時の受け身の対応であった。

今回は更に掘り下げて、筆者も相談、面談の時に意識している、沈黙する相手からスムーズに話を引き出す方法、会話テクニックを話すとします。

1.ラポール形成を意識する

知らない人とは話したくない

会話が弾まないのは、相手が警戒しているからだ。
特にカウンセリングや商談など、相手の状況をヒアリングしなけらばならない場合においては、相手は道で出会った野生動物の様に警戒し身構えている。自分を捉えて獲物にしてしまうのか、それともひもじいこの胃袋に餌をくれる救世主なのか観察しながら、いつでも反撃したり逃げたり出来るように腰をかがめているのである。
得体のしれない相手になぜ自分の事を話さなければならないのか。
あれこれ質問されて挙句の果てに痛くもない腹を探られたくはない。
そう思っている。

信頼を築くラポール

ラポールとはフランス語で「橋を架ける」という意味で、カウンセリングやセラピーなど心理学で使われる患者と医師の間の信頼関係を築く事を意味する用語である。

ラポールを形成することで、患者も医師もお互いにリラックスした状態で話ができ、カウンセリングから治療法の計画までスムーズに正確性を持って行うことが出来るのである。

この解釈を拡大して、近年ではビジネスやチームワークにおいてもラポール形成の重要性が認識されて来ている。

一般的なコミュニケーションにおいてもまずこのラポール形成から始めると人間関係が豊かになり、仕事の場でもその後の共同作業の効率や成果が上がるようになる。

では、どの様にしてあまり親しくない相手とラポールを形成するのか

2.導入部分の声掛けを用意する

いきなり本題に入るのはNG

「こんにちは。どうぞお座りください。○○の件ですけど…」とやってはいないだろうか。
ビジネスや相談、面談の場面でいきなり本題に入るのは最も成果の乏しい道を選んで進み始めるようなものである。

いきなり本題に入って良いのは教師、師匠といった、相手が教えを請うような立場がはっきり決まっている場合のみだ。

誰しも得体のしれない相手と行く先の分からない橋を渡ろうとは思わない。
そこにはラポールが全く形成されていない。
準備運動なしではいきなり最大のパフォーマンスなど発揮できないのだ。

本題を進める中でラポールを形成していく事も不可能ではないが出来る限り導入の段階でラポールを形成しよう。

ウオーミングアップの声掛け

どんな場合でも大事な話の前にはラポール形成が欠かせない。
それには本題の前に関係のない話題でウォーミングアップをする事だ。

具体的には

1.天気の話題、季節の話題。

これは無難ですな。分かりやすい。

  • 「暑いですね」
  • 「最近急に寒くなりましたね」

これだけでもあると無いとでは大違い。
だが、点数としては40点。ギリギリ合格点に過ぎない。
その場の空気を温めるには今一つ温度が足りないのである。

2.感謝の言葉・ねぎらいの言葉

これを言われて機嫌の悪くなる人はいないだろう。

  • 「今日はお会いできて嬉しいです。」
  • 「お忙しい所に時間を作ってくれてありがとう。」
  • 「学級委員よく頑張っているね。助かってるよ。」
  • 「いつも大変ですね。本当に尊敬しています。」

など、相手をねぎらってから話題に入ると気分も良いでしょう。

3.何かしら褒める

これもねぎらいと似ているが、さらに気分良くなってもらう方法でビジネスの場では特に効果が高い。

  • 「お洒落なノートですね。どこで買ったんですか。」
  • 「いつも成果を上げていますね。学ばせていただいています。」
  • 「今回の提案すごく良かったです。目の付け所がさすがですね。」
  • 「笑顔が爽やかですね」
  • 「いつも若々しいですね」

我々日本人は褒める事に慣れていないので中々実践できている者はいない。

それだけに実践するとしないとでは格段の差が出るので是非取り入れてもらいたい。

導入部分はこれぐらいでいいでしょう。

要するに相手を尊重し、褒めたたえて気分良くさせる事で、警戒心を解き大げさに言えば敵対心が無い事をアピールする事である。

ビジネスやカウンセリングの場合はここから本題に入っても問題ない。


但し、あなたはビジネスなどの場面ではなく、雑談場面での会話を続けたいという目的でこの記事を読んでいるのではないだろうか。

3.自己開示からの傾聴を繰り返す

導入部分が終わったら自己開示

雑談の場で、自ら相手に歩み寄り関係性を良くしたい相手は、あなたにとって重要な相手であろう。

前回の記事でも言った通り、人は自分に関する話が一番大事だ。
しかし、自ら自分の事を話すかどうかは話す相手による。

昨日今日知り合ったような、まだ仕事の話しかしたことの無いような相手に自分の情報など話す事には抵抗がある。
そうなると、天気の話や季節の話、時事ネタ、などの雑談で終わってしまい、中々そこから踏み込んで関係性を一歩前進させることは難しい。

関係性を深め親しくなるためには相手自身の文字通りある程度深い話をすることが必要である。
相手に気持ちよく壊れた蛇口の様に言葉がとめどなく流れ出し、自分の話を満足するまでしてもらうにはどうすれば良いのだろうか。

そんな時は質問の奥義『自己開示からの質問』の出番だ。

自分の個人情報の中でもネガティブで普通は話さなくてもいいような話をする事を「自己開示」という。

自己開示をすることで、私はこういう人間です。何ならあなたよりも弱い部分のある、攻撃性の無い安心の存在ですよ、と相手の警戒心を引き下げる効果が期待できる。
更に、「ここまで話してくれたなら、自分も話をしなければ」とお返しに話をせざるを得ない心理にさせられる、受け取ったらお返しをしたいという心理学用語でいう『返報性の法則』が発動する。有効な作戦行動である。

何かを聞きたい時には先にその話題に関する自分の事を打ち明けるのだ。

間違えてはいけないのは、自分の優れた経歴、高い地位などポジティブな情報を開示する事は自己開示とは言わないという事だ。それは単なるマウント取りで、全くの逆効果となるので決してやってはいけない。

 

親しくない相手にはそもそも興味もないし、自分の事も話したくない。
そんな時、相手が自分のプライベートな少し恥ずかしいような或いは少しマイナスな情報を話してきたらどうだろう。
そこまで話してくれるのであれば、自分も少し話をしてあげなければと南極の氷山のような私たちの心も、暖かい日差しを注がれてゆっくりと溶け出してしまうのである。

すぐさま、質問をぶつけられれば条件反射的に自分の事を話してしまうだろう。
相手に自己開示されて自分は話をしないなどという鉄の仮面を被ったような人物には滅多にお目に掛かれない。
もし、そういう人がいたら逆に興味がわくかもしれないが。

相手に話をしてもらいたい時はその項目に関する簡単な自己開示をしてから、さらりと質問をしてみよう。

  • 「私は○○町に住んでいて、ここへ来るのにバスと電車を乗り継いで1時間くらい掛かるんです。○○さんはどの辺にお住まいですか?」
  • 「昨日は妻の買い物に付き合わされて足が棒の様になりました。○○さんはご結婚されているんですか?」
  • 「甘いものが好きでチョコレートなんか何種類も買ってきて一人でついつい食べ過ぎてしまうんです。○○さんはどんな食べ物が好きですか?」

自己開示と言っても初めの内は軽く簡単な話題にして、相手も答えやすい項目の質問をしよう。
それだけでも十分ラポール形成につながるような会話が出来てくる。

唐突な自己開示は警戒を呼ぶ

自己開示が傾聴の第一歩だとしてもいきなり自分の話をされたり、重い話をされたりしたら相手も驚き、逆に警戒される場合がある。

軽い話ならいきなり自己開示をしても良いだろうが、相手の本音を聞き出したい場合などはやはり、第一の項目で話した「つなぎの声掛け」が必要だ。

  • 「お会いできて嬉しいです」
  • 「お仕事帰りにありがとうございます。」
  • 「お待ちしてました、時間は掛かりましたか。」
  • 「緊張なさらずにゆっくりして行ってくださいね。」

など相手を気遣う言葉

  • 「この間の○○はどうでしたか?」
  • 「先日はありがとうございました。あの後どうでしたか?」

など前回の話題など

その他、天気の話、ニュースの話などでウオーミングアップをしよう。

急に生い立ちだとか、持病の話など重い話をされても相手は引いてしまう 上に、自分はそこまで話したくないと思われ自分の事についてははぐらかされて終わるだろう。

そうしたら、ラポール形成は振り出しに戻ってしまう。
どうしても重い話をしてしまった場合は「あなたは?」などと質問しない事で、逆にラポール形成の前進につながるだろう。

もう1つのメリットとしては

親しくなれば相手の話と自分の話を交互に話したいという心理が働くということだ。

自分が話せば相手にも話してもらおう。

返報性の法則を利用しよう

貰ったらお返しをしたくなる心理学でいう返報性の法則
話されたら話をしたくなる返報性の法則は親しい、親しくなる前どのフェーズでも働く心理効果である。

例えば、いきなり休みの日は何をしているか聞いてもはぐらかされてしまうかもしれない。それならば初めに自分の事を話してしまおう。

「先週の日曜日は新作のゲームに夢中になって1日どこにも行かずにゲームばっかりして気が付いたら深夜になっていました。おかげで次の日寝不足で仕事が辛かったです。○○さんは休みの日はなにをしているんですか?何か趣味みたいなものってあるんですか?」

大抵の人は、私はこうしてますとか私は何々が趣味ですとか、あなたの話の量に合わせたボリュームで何かしら答えてくれるはずだ。

そこからまた、オウム返しや5W1Hを駆使して会話を広げて行けば良い。


仕事でお客様の状況を聞きたい場合
この簡単な法則が使えていないビジネスパーソンは意外といる

悪い例

Q.「今何かお医者さんに通ったりお薬を飲んでいらっしゃいますか?」

A.「別にそれはないですけど。」(話すと不利になりそうだ。)

良い例

Q.「当社の相談窓口には、持病で頭が痛くなったり、お腹が痛くなったりして通院されている方が多くいらっしゃいます。そういった方こそ安心して活躍しやすい仕事をご紹介する様なシステムになっているのですが、何か通院やお薬の服用などはございますか?」

A.「はい、少し腰痛があって整体に通っています。」(何かあったら相談できそうだ。)

世の中はギブアンドテイク

この返報性の法則はどのような場面でも作用すると覚えておこう。
金品でも、情報でも相手からもらうばかりでお返しをしなければ、相手は去って行く。

逆に先に与えてしまえば、お返しをしなければ気持ちが落ち着かなくなるので、相手は返してくれる。
しかも、与えたものよりも自分にとって大きなものを返してもらう事のほうが多い。

与えてから与えてもらう事で結果的に得をする。

全てにおいてこのことを覚えておこう。

4.相手の興味に話題を合わせる

大切なのは相手の話を聞いてあげる事

大切なのは自分の話は短めにして相手に話を多くさせる事だ。

ラポール形成をして相手と親しくなるためには、相手に気分良くなってもらわなければならない。
会話においてどんな時に気分が良くなるか。お分かりだろう。

そう。自分の話をしている時である。

どんなに親しくても、あなたが自分の話ばかりすると相手は退屈になってしまう。
誰しも一番の関心事は自分の事だ。
もっと、私の話も聞いて欲しいと思うのだ。

話し始めたら雰囲気を相手に合わせる

そこからは話し方のスピードや雰囲気を相手に合わせること。

オウム返しやそれとなく仕草を真似るミラーリングで同じ種類の人間である事を示し、警戒心を解いていこう。

ビジネスやカウンセリングでは徐々に状況を把握して、困りごとや問題点を洗い出していく。

人間は自分が一番大事で実は自分の事を話したい

皆自分の事を話したい。

それなのだが、日本の場合は伝統的な教育から自分を押さえる風潮にある。

そうしないと村社会からのけ者にされてきたからである。
現代においても変わらず出る杭は打たれ、1人だけ得をする事は許されず足を引っ張り合う有様だ。

その古くからの呪縛を開放して相手を肯定し、さも高尚な住職のお説教を有難がる様に話に耳を傾けてあげる事によって、相手の心が解き放たれる。
心を許せる相手とは次第に関係性が深まり、ありとあらゆるものを、取って置きの秘密でさえ共有しても良いと思えてくるのだ。

第一歩として懐から取り出すのは自己開示という刃である。
あなたのその自己開示の言葉が相手の胸に突き刺さり、心を動かすのだ。

 

まとめ

あまり親しくない相手との会話では、相手が警戒してイエスかノーあるいは「別に、」「分からない、」などと取り付く島もない、まるで取り調べ、尋問のような状態になる事もあります。
会話の導入に失敗して話が弾まない場合は兎にも角にもいち早い修正が必要です。
長引けば傷はますます深まり手遅れになってしまう。

意識したいのは

  1. ラポール形成を意識する
  2. 導入部分の声掛けを用意する
  3. 自己開示からの傾聴を繰り返す
  4. 相手の興味に話題を合わせる

くれぐれも会話の導入部分を疎かにしないように心がけよう。
今回紹介した4つのポイントを1つずつでも実践して雑談の力を身に付けて、あなたの人間関係にいろどりを加えていって欲しいものです。

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